退役後の戦闘機がたどる奇妙な運命~F-4ファントム戦闘機の場合~

Amazonプライムビデオで『解体!F-4ファントム戦闘機』という教育番組みたいなものを見つけたので思わず見ちゃいました。

退役後の戦闘機がたどる道

F-4ファントム戦闘機というのはアメリカ製の戦闘機で、ベトナム戦争の時代に設計された古い機種です。

数多くの国に輸出され、日本でもF-4ファントムを改造したRF-4EJなどが配備されていたことがあります。

そんなF-4ファントム戦闘機は初飛行から半世紀近くがたち、ほとんどの国では退役して新しい機種との交換が進んでいます。

『解体!F-4ファントム戦闘機』では退役後のF-4ファントムがどのような人生を送るのか、追跡取材したものです。

『解体!F-4ファントム戦闘機』によれば、退役後の戦闘機がとおる道は2つ。

  1. 分解され、まだ使える部品は現役機体の交換用部品として再利用される
  2. 無人機に改造され、新型ミサイルの標的になって爆破される

この2つの道について説明します。

分解され、現役機体の一部として使われる

国によって方針は違いますが、ドイツでは退役戦闘機はイェーファー航空基地で分解され、現役機体の交換部品として再利用されます。

F-4ファントムはメーカーでの生産が終了しているため交換用部品の入手が難しく、退役した機体の部品を現役の機体に使い回すことでその場をしのぎ、現役機体ができるだけ長い期間現役で飛び続けられるようにしているようです。

使えるかどうかチェックする(性能試験)

分解の手順は複雑で、最初は「まだ使える部品」を確認するためのテストが行われます。

  • ジェットエンジン
  • 計器類(高度計やエンジンの状態を確かめる計測機器、センサーなど)

のチェックをして、ちゃんと動くか確認します。

もしも壊れていた場合、現役機体の修理用に使っても意味ないですからね。

とくにジェットエンジンは高額で、1つ100万ドル(1ドル=100円で計算すると1億円)もするそうです。

F-4ファントムにはジェットエンジンが2基付いているので、状態が良ければ2億円のお宝を手にしたことになります。

武装解除

ジェットエンジンなどの動作チェックが終わったら、ガトリング砲を取り外して、溶接用のバーナーで銃身などを切断します。

万が一にも武器が使える状態のまま外部に流出してテロリストの手に渡ったりしたら大変なので、武器だけはその場で破壊するわけです。

座席や翼、エンジン、計器類を取り外す

武装解除が終わったら、ようやく分解作業にはいります。

最初は射出座席から取り外すらしいのですが、射出座席は座席を”射出”するために、ロケットカートリッジ(火薬)が付いています。

分解作業中にウッカリ射出されたりすると作業員に危険が及ぶので、最初にロケットカートリッジだけを取り外すそうです。

ロケットカートリッジを取り外したら、座席、パラシュート、救命装備などを取り外していきます。

その後、ジェットエンジンや翼の取り外し、ランディングギア(タイヤなどの着陸装置)を取り外し、残ったケーブルや細かい部品も分解していきます。

取り外した部品はバーコードで管理され、次にどの機体に使われるのか?を追跡できるように管理しているそうです。

ジェットエンジンだけは分解後に内視鏡検査をして、エンジン内部に細かい傷や致命的は損傷がないかをチェックします。

墓場へ捨てられる

もう取りつくせないくらい解体したら、残りは”墓場”と呼ばれる場所に移動します。

ドイツの場合は基地内の一角に墓場があるので、そこへ捨てます。

捨てるといっても鉄とアルミの塊なので、あとでスクラップ業者に売り渡して、粉々にしてもらうそうです。

解体作業をしていた隊員の言葉が印象的でした。

「多くの人が心血を注いで作った戦闘機です。たくさんの構想やノウハウが詰まった傑作なのに、今はゴミとして捨てられる運命だなんて不思議な気分です。」

無人機に改造され、新型ミサイルの性能試験に使われる

F-4ファントムがたどる道はもう1つあります。

今度はアメリカの方法になるのですが、アメリカでは退役したF-4ファントムを無人機に改造し、新型の空対空ミサイル(敵の飛行機を撃ち落とすために戦闘機に搭載されたミサイル)の実験用の標的にして撃墜します。

ちなみに無人機への改修作業だけで250万ドル(1ドル=100円で計算すると2億5000万円)するそうなのです。

お金かかりすぎ!

無人機には翼などに各種センサーが取り付けられ、接近する実験用ミサイルの速度や接近する角度、命中後の機体の状態など、細かいデータがリアルタイムで計測されます。

無人機はミサイルが命中しない場合もあるので、平均すると3~5回程度飛行できるそうです。

そして最後はミサイルの威力で粉々になるか、中途半端に壊れた場合は自爆装置で爆破され、メキシコ湾に沈みます。

無人機を遠隔操縦する地上スタッフの言葉

「100万ドルのテレビゲームで遊ぶのが仕事だ、と妻にからかわれます」

最後まで徹底的に使い倒す

戦闘機は設計、開発、生産までにものすごくお金がかかります。

その時代の最先端の技術を集めて作られるので、古くなったからといってそのまま捨てるのはもったいないです。

解体されて現役機体の一部として生き続けるか、ミサイルの試験に使われて華々しく散るか?

たどる道は違いますが、「最後まで徹底的に活用する」という気概が感じられました。

ちょっとマニアックなドキュメンタリーですが、戦闘機や乗り物に興味がある方はご覧になってみてください。

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