まだ今年度に入って1週間もたってないけど、今年度最大級に「へえ~」と思える雑学を知りました。
- 能力主義の階層社会では、人間は能力の極限まで出世する。したがって、有能な平(ひら)構成員は、無能な中間管理職になる。
- 時が経つにつれて、人間はみな出世していく。無能な平構成員は、そのまま平構成員の地位に落ち着く。また、有能な平構成員は無能な中間管理職の地位に落ち着く。その結果、各階層は、無能な人間で埋め尽くされる。
- その組織の仕事は、まだ出世の余地のある人間によって遂行される。
なぜ組織には”無能”しかいないのか?
ピーターの法則と名付けられたこの法則は、平たく言ってしまえば「役職や階級のある組織では、各階層メンバー全員がいずれは無能で埋め尽くされることになる。」という法則です。
たとえば
- 平社員
- 主任
- 係長
という階層に分かれているとします。
この場合、無能な平社員はいつまでたっても平社員のままで階層が固定され、有能な平社員は主任に抜擢されます。
その結果、平社員の階層には無能な平社員ばかりが残ることになり、いずれは平社員の中に”有能な”平社員は1人もいなくなります。
そして主任でも同様のことが起こり、無能な主任はいつまでも主任でい続け、有能な主任は係長に昇進してしまいます。
その結果、主任クラスから有能な人材だけがどんどん抜けていき、後に残ったのは無能な主任ばかりになってしまうんです。
そしてさらに係長、課長、部長でも同じことが繰り返されるため、最終的には各階層のメンバー全員が”無能”な人ばかりになるんですね。
僕も会社員をしていたころ、「このクソ係長が!」と思うような人や、陰で「お飾り課長」と呼ばれている人の元で働いたことがあります。
また「あっ、この上司には勝てるな。」と思えてしまうような上司を何人も見てきました。
そういったいわゆる”無能”と呼ばれる人たちが自分よりも上のポジションにいることに僕はいつも疑問を感じていたのですが、ようやくその謎が解けてスッキリした気分です。
無能が増えるのは年功序列が原因とは限らない
ピーターの法則を知るまでは、会社に無能な人が多い理由は別にあるのだと考えていました。
たとえば年功序列制度。
年功序列制度は勤続年数が長いというだけで昇進したり給料が上がったりする制度です。
この制度のせいで能力に不釣り合いなポジションに昇進する人が量産され、「勤続年数が長いだけで役職が高い無能な人」が管理職に多いのだと思っていました。
事実、人手不足で大量の若者が簡単に就職できた時代がかつてありましたが、この時代に採用された人たちの中には「人は余ってるのに役職が足りない」という理由で謎の役職についている人も多く、年功序列って害悪だよな~と思ってました。
- 課長補佐
- 統括係長
- 第二係長
こんな感じの「なにをやってるのかよくわからない謎の役職」についている人の多くは、「勤続30年なら最低でも係長にしてあげなければならない。でも係長枠はすでに埋まってるので、しかたないから新しく第二係長のポジションを作って無理矢理そこにつかせよう。」みたいな理由で係長になっただけのボンクラどもが多かったです。
彼らはどんなに無能でも好待遇の役職に就けることが約束されているので、自分の能力を磨こうとする人は少なく、会社には無能な人が多いのだと僕は思っていました。
人事部のミスでもない
また、人事部が無能なせいで適切な人材を適切な部署に割り振ることができず、個人のヤル気を奪っていることも原因の1つだと考えていました。
ヤル気を奪うことで「どうせ俺はこの部署では活躍できない。頑張っても無駄。それならテキトーに仕事して給料だけもらっておこう。」と考える従業員が増え、その結果、社内には無能で役立たずな人で溢れているのだと僕はおもっていました。
意図的な窓際族へ配置したり左遷したりするのではなく、従業員側が「自分は左遷されたのだ。」と勘違いしてしまうような配置ミスが頻繁に起こるせいで、全体の士気と生産性が落ちて「無能ばかりいる状態」が生み出されるんだと思っていたわけです。
成果は常に有能な人材だけが作っている
ピーターの法則には「3、その組織の仕事は、まだ出世の余地のある人間によって遂行される。」とあります。
これは言い換えれば「現在の役職から昇進する”一歩手前”の段階にいる、一部の有能な人材だけが成果を作っている。」とも表現できます。
「8:2の法則」と似ていますね。
8:2の法則は、「成果のうち8割は、メンバーの2割に当たる優秀な人たちが作ったもので、成果のうち2割は、残りの8割に当たる無能な人たちが作ったものである。」という法則です。
ピーターの法則「まだ出世の余地のある有能な人間」
=
8:2の法則「成果の8割を生み出す優秀な人間」
と解釈すれば、これも納得です。
有能な人材の昇進=適材適所ではない
有能な人材が昇進した後にも、ワナが待ち受けています。
昇進前のポジションでは有能だった人材でも、昇進後の仕事でも能力を発揮できるとは限らないからです。
これはスポーツの世界でよくある
「有能な選手が有能なコーチになるとは限らない」
があてはまります。
平社員として人の指示に従って仕事をする能力にたけていた人でも、主任や係長として部下を管理するのが得意とは限りません。
そもそも、長いあいだ平社員としてのスキルを磨いてきたからこそ「有能な平社員」になれたのに、昇進していきなり仕事の種類が変わったら、その仕事での遂行能力はゼロに等しいです。
ということで、
有能な人材を昇進させること
=
無能な人材を量産すること
になるので、能力主義の階層社会では昇進制度自体がそぐわないと言えます。
そして組織は無能なメンバーで満たされる
ピーターの法則を知ることで、年功序列制度や人事部のミスだけではなく、新たな視点で組織の弱体化や生産性の低下を考えることができるようになりました。
「そもそも、役職・階級のある組織は無能ばかりになる」
という法則を理解できたからです。
第三の視点を手に入れたようなものですね。
たんなる自己満足に過ぎないのですが、会社員の方で「管理職や同僚に無能な人が多い!」と感じた時には、ピーターの法則で納得してみてください。
組織から無能を減らす解決策
ピーターの法則には解決策も提示されているので、こちらもご紹介します。
- 第1の帰結は、現在の仕事に専念している者は昇進させず(ディルバートの法則と類似)、代わりに昇給させるべきである。
- 第2の帰結は、新たな地位に対して、十分な訓練を受けた場合にだけ、その者を昇進させるべきである。これにより、昇進の(後ではなく)前に管理能力に欠ける者を発見することができる。
僕なりに解説すると、
- 有能な人材は昇進させるのではなく、成果に応じて給料を上げた方が組織にとって良い結果になる
- 有能な人材を昇進させたい場合は、昇進に必要なスキルを予め訓練させてから昇進させる
ということになります。
無能が増える理由と解決策のまとめ
長くなったのでまとめです。
- 能力主義の階層社会では、そもそも、無能な人間が量産される仕組みになっている
- 優秀な人材は昇進させるよりも昇給させた方が良い
- 昇進させる際は、昇進先で必要なスキルを備えてから昇進させる
- これらを「ピーターの法則」という
会社組織はたくさんの人の力が組み合わさることで1+1が3にも10にもなる成果を作り出すことができますが、足し算のやり方(昇進制度の運用方法)を間違えるとゼロやマイナスにもなります。
昇進制度は使い方を間違えると無能な人材を量産したうえに会社の生産性も下げてしまうので、上手に運用していかなければなりませんね。
「ディルバートの法則」について(追記)
ピーターの法則について調べていたら、「ディルバートの法則」というよく似た理論の存在を知りました。
「ディルバートの法則」は、「生産性の無い無能な人材ほど素早く昇進させ、生産ラインから排除する」というものです。
なにをやらせてもダメな人っていますよね。
こういう人は現場で働かせても他の人たちの足を引っ張るだけなので、さっさと昇進させて現場から排除した方が全体の生産性が上がって組織にとっては有益だという解釈です。
皮肉や嫉妬も混じっているとは思いますが、とても面白い考え方ですね。
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