パソコンのキーボードで文字を入力する方法の1つに「親指シフト」という入力方式があるのをご存知ですか?
- 親指シフトとは(Wikipedia)
親指シフト用の設定をしたうえでキーボード手前側にある「無変換」「変換」キーを親指で押しながら、もしくは押さずに文字入力する方法のことです。勝間和代さんの『年収10倍アップ勉強法』を読んでその存在を知り興味を持ったのですが、慣れるとローマ字入力よりも早く文字が入力できるようになるとか。
この親指シフト、1つのキーに2つの文字が割り当てられていたり親指でキーを押すタイミングが少しでもズレると意図しない文字が入力されてしまったりするので、マスターするためには相当な練習が必要だそうです。
いまさら練習してまで文字の入力速度を早くするのもな…と思いつつ、それでもやる価値がありそう!と思い色々と調べていった結果、結局親指シフトをやらないことにしました。
親指シフトをやらないことにした理由
僕はニートで時間だけはたっぷりあるので、劇的な効果が望めるのであれば訓練してでも親指シフトを極めたいと思っていました。
しかし調べているうちに「入力速度が速くなる」というメリットを打ち消して余りあるほどのデメリットがいくつも見つかり、「僕には必要無いな」という判断に至りました。
やる理由ではなくやらない理由を述べるのはなんとも消極的で心苦しいのですが、以下、親指シフトをやらないことにした理由を書き連ねていきます。
マスターするためには相当な訓練が必要
親指シフトは小学校で習ったローマ字による入力方法ではありません。かといって、日本で販売されているほとんどのキーボードに印字されている”ひらがな”を押していく入力方法でもありません。
つまり、親指シフトで入力するためにはキーボードに最初から印字されている文字は全部無視して、親指シフト専用のキー配列を暗記する必要があります。
タイピング速度が速くなるほど恩恵が受けにくくなる
親指シフトによるスピードアップの恩恵は、タイピングの初心者ほど大きいそうです。
ある程度高速でキー入力できる人が親指シフトに移行しても、文字入力の速度はそれほど上がらないということです。
僕のタイピング速度は中級といったところで親指シフトをマスターすれば少しはスピードアップしそうですが、新聞記者やウェブライターのように毎日大量の文字を入力しているわけではないのであまり恩恵は受けられなさそうです。
タイピングミスに気付きにくい
親指シフトでは「だ」「で」「ば」のような濁点を付けるときに、親指キーと濁点なしのひらがなキーを『同時に』押す必要があります。この『同時に』が厄介で、タイミングが合わないと濁点付きの文字を入力するつもりが濁点なしで入力されてしまいます。
たとえば「~だそうです」と入力するつもりだったのに「~たそうです」とか、「~ばかり」が「~はかり」と入力されてしまったりします。ある程度画面のサイズが大きければミスに気付けますが、ノートパソコンみたいに画面が小さいとミスに気付けない可能性が高いです。
ローマ字入力であれば濁点が付いてる・付いてないといった紛らわしい文字の入力ミスがそもそも発生しづらいので、紛らわしい文字の入力ミスが起こりやすいというのは親指シフトのデメリットと言えます。
ショートカットキーが使えない
親指シフトでは「Ctrl + C」でコピー、「Ctrl + V」で貼り付け、といったショートカットキーが使えません。ショートカットキーを使いたいときには親指シフトを一度解除する必要があります。
僕はショートカットキーを頻繁に使うので、わざわざコピーしたり貼り付けたりする際に親指シフトの設定をオン・オフしたりマウスの右クリックを使用したりするのは面倒に感じてしまいます。
片手入力ができない
親指シフトでは片手入力ができません。そもそも片手入力しないことが前提条件になっているからです。
正確には「できないことはない」のですが、入力できる文字が限られます。
僕は片手でポテトチップスを食べながらネットサーフィンをし、気になったことは空いているもう片方の手ですぐに検索する…といったことをよくしているのですが、親指シフトではこういったことができません。
ポテトチップスで油まみれ・涎まみれになった指をキレイにしてからでないと文字が打てないのは不便です。
会社のパソコンでも親指シフトに設定できるとは限らない
親指シフトはパソコン側での設定が必要な特殊な入力方法です。自宅のパソコンで親指シフトをマスターできたとしても、同じ入力方法が会社のパソコンでも使えるとは限りません。
文字入力の速度が速くなることで最も恩恵を受けられる場面は仕事だと思います。文字の入力速度が早まればそれだけ早く資料を作成できたり文書を作成できたりするわけで、親指シフトをマスターできれば職場では「仕事の早い人」「仕事のできる人」という印象を与えることができ、昇進や給料アップに役立つはずです。
しかし肝心の親指シフトが必ずしも職場のパソコンでも実行できるとは限らないのであれば、あえて親指シフトを学ぶメリットは格段に下がるでしょう。
最近では会社で自分専用のパソコンを割り当てられておらず毎日パソコンと席が変わる働き方(フリーアドレス)や、自分でパソコンを持ち歩いて仕事をするわけではなく出先にあるパソコンで仕事をするスタイル(ネット喫茶で仕事をするようなもの)もあります。そういった場合には目の前にあるパソコンでいきなり親指シフトが使えるわけではなく、いちいち設定しなおす必要が出てきます。
いちおう親指シフトの設定を施したUSBメモリを差し込むだけで親指シフトをパソコンに反映することもできるそうですが、常にUSBメモリを持ち歩く必要があります。
そもそも仕事をしていないニートの僕が何を言っているんだ?という感じかもしれませんが、僕にとって親指シフトをマスターするメリットが無いのは確かです。
日本人しか使わない機能なため世界標準ではない(サポートが受けにくい)
ここまで親指シフトのデメリットや僕が親指シフトを学ばないことにした理由を延々と書き連ねてきました。
親指シフトのデメリットについて俯瞰してみると、親指シフトが使いづらい、デメリットが大きい、あるいはデメリットが解消されず放置されている根本的な理由は「親指シフトは日本人しか使わないから」だと考えられます。
パソコンもキーボードもソフトウエアも、基本的には世界中で販売されることを前提にして製作されています。
日本人にとって使いやすいからといって「親指シフトが入力しやすいキーボード」をわざわざ作ったとしても、そのキーボードは日本でしか販売できません。たった1億人程度しかいない日本人のために作った商品は、アメリカ(3億人)やインド(13億人)で販売してもあまり売れないわけです。
同じ理由で、たったの1億人しかいない日本人のためだけに、親指シフトを設定してくれるソフトウェアを開発したりバグを修正したりすることもありません。もちろん日本人しか使わないソフトウェアは世の中にはゴマンとあるのですが、
- 親指シフトで入力しやすいキーボードを製造しない
- 売ってないから親指シフト入力する人が少なくなる
- マイナーな入力方式なためわざわざデメリットを解消したりソフトの開発をしたりしなくなる
といったことが起こります。
総じて「日本人しか使わない仕様のために労力を費やすのは無駄」ということになり、これが親指シフトに移行する人が増えにくい理由になっています。
そもそも音声入力でよくね?
普段から大量に文字を入力している方は親指シフトを学ぶメリットが少しはありそうですが、「もっと早く文字を入力できるようになりたい」というのであれば、親指シフトよりも音声入力の方が格段にスピードアップできます。
DictanoteやGoogleドライブの音声入力など無料で使える音声入力ソフトがありますし、認識精度も日々向上しています。両手がフリーな状態でも文章が書けますので、親指シフトを学ぶくらいなら音声入力にした方が良いのではないでしょうか?
実は『年収10倍アップ勉強法』を読んで、早くて特殊な入力方法と聞いたのでカッコイイな!と思って親指シフトに一瞬だけ興味を持ったのですが、現在では親指シフトよりも早くて便利で簡単な音声入力が普及しているので僕は親指シフトを学ぶのはやめました。
こんな感じ↑で「さすが!」とか「なかなかできることじゃないよ」と褒められることもあろうかと思っていたのですが諦めました。そもそも披露する機会が無いしね!
親指シフトはIT黎明期に極東の島国に住むごく一部の人たちが使っていたマイナーな入力方法として歴史に名を残し、その役割を終えたのです。
親指シフトの実践者・勝間和代さんが本を書いた時代にはまだ親指シフトが有益だったんでしょうけど、時代が進み少しだけ状況が変わったようですね。
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