僕は危険物取扱者(乙種1~6類)の資格を持っていたので、たまには化学的なネタでも書いてみたいと思います。
今回は基本的な火の消し止め方から、ちょっと変わった消火方法までをご紹介します。
火事は起きないのが一番いいですが、もしもウッカリしてボヤ騒ぎを起こしてしまった際には、消防(119)へ電話した後、消防車が到着するまでの待ち時間にできることがあるかもしれません。
このページの消火方法を参考にしてみてください。
水をかける
バケツリレーで見られる最も原始的な消火方法です。
水をかけることで火の元へ酸素が供給されるのを防ぎ、なおかつ温度を下げて新たな火種が誕生するのを防ぎます。
しかしこの方法には欠点もあります。
消火対象に油が含まれていた場合、水をかけることでかえって火の元を広げてしまう可能性がある点です。
水と油って混ざり合わないですよね。
火のついた油に水をかけると、水に浮いた油が水の流れに沿って拡散することがあります。拡散した油に引火したら、延焼範囲が拡大してしまいます。
揚げ物料理をしているとき、てんぷら油に火が付いてしまったら濡れたフキンをかぶせるなどして酸素を遮断しろと言われているのもこのため。
水で消火するというよりは、「酸素を遮断する」と覚えておいた方が良いです。
泡をかける
油火災専用の消火器には、不燃性の薬剤が含まれる”泡”が出るものがあります。
泡なら酸素を遮断できるので消火効果が高いし、水みたいに勢いよく流れたりしません。火のついた油分を拡散させずに済みます。
泡消火のデメリットとしては、そもそも泡タイプの消火方法があまり知られていないことと、消火器の場合は一般的な粉末タイプに比べて値段が高いことです。
粉タイプは3,000円~買えますが、泡タイプの消火器は1万円以上します。
粉をかける
一般的な消火器だと不燃性の”粉”が出ます。
火の元に粉をかぶせることで酸素を遮断し、消火させるんですね。
粉も泡と同じで、火の元を拡散させずに済みます。
粉タイプのデメリットとしては、粉末が人体に有害な物質を含んでいることがあったり、屋外など風が強い場所では狙った場所に粉をかけられないことが挙げられます。
泥をかける
泡、粉、と同じ効果を期待して”泥”をかぶせる消火方法もあるそうです。
一般的な消火方法ではありませんが、身の回りに十分な量の水や消火器がなく、また火の元にかぶせられる適当なものがなかった場合には地面の土をかけたり泥をかけたりすると消火に役立ちます。
デメリットとしては、室内や都会などコンクリートで舗装された場所では土が手に入らないことでしょうか。
不燃性のガスで空間を満たす
不燃性のガスで消火することもあります。
美術館や博物館など、火災が発生した際になるべく美術品に水をかけたりして汚したくない場所では、不燃性のガスが使われます。
美術館では展示室の出入り口に「Cx Hx Clx(xには数字が入る)」など不燃性ガスの成分が表示されていたり、気密閉鎖用の防火シャッターや防火扉が設置されていたりします。
火災発生時には展示室内を密閉状態にして不燃性ガスで充満させるので、酸素不足になり人間にとっては有害です。
基本は酸素の遮断
小学校の理科の授業で習ったかもしれませんが、モノが燃えるためには酸素が必要です。酸素の供給を絶つことができれば、燃え広がるのを防げます。
水をかけるのも泥をかけるのも不燃性のガスを充満せるのも、すべては火の元から酸素を絶つためなんですね。
例外的に、花火や爆竹に含まれる火薬や爆薬は「酸素を発生させる物質」を含んでいるため、酸素がない場所でも燃えることができます。
バケツに汲んだ水の中でも花火が燃やせたり、ロケットが宇宙空間でも火を噴けたりするのは酸素が発生する化学物質を含むからです。
花火のような特殊な事例はありますが、基本的にはアルコールランプに蓋をするのと同じで、酸素を遮断することで火は消し止められます。
化学は面白い
何に興味を持つかは人それぞれですが、化学の知識があるとイザという時や日常の場面で役立つことがいろいろあります。
火事のときに限らず、たとえば料理などにも応用できます。
煮たり焼いたり調味料を加えたり・・・これって全部化学反応を起こしているだけですからね。
化学の知識があれば身の回りの不思議なことを論理的に解明できたり、より効果的な方法でトラブルに対応できたりするので、興味があれば追求してみてください。僕はハマりました。
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