以前、日本企業の生産性が低い理由について書いたことがあります。
記事を書いて以来、生産性について興味を持っていたのですが、日本と違ってアメリカでは生産性が向上しまくっているようです。
金融機関のゴールドマン・サックスによると、新型コロナウイルスの世界的大流行の影響によって、アメリカ経済の生産性が2022年までに少なくとも2%、最大で6.7%上昇するとのことです。
アメリカで生産性が向上している原因は主に3つあるそうなので、1つずつ見ていきます。
電子商取引(EC)の加速
まず1つ目は、電子商取引(EC)の加速です。
日本でも同じ現象が見られますが、ネットでの取引やデジタル決済が増加し、代わりに実店舗での取引が制限されています。
その結果、アメリカでも生産性が向上しています。
商取引をするときには、納品書や契約書の受け渡し、商品代金の決済などで手間がかかります。企業の商取引でなくても、普段近所のスーパーで買い物をする際、現金で支払いをしたりレシートを受け取ったりすることはあると思います。これらの面倒なやり取りのデジタル化が加速したことで、経済にとって好影響が出ているということです。
アメリカではコロナの影響でEC化が3年分加速したとのことで、思わぬところで恩恵を受けているようです。
リモートワークの継続
アメリカの生産性向上に貢献していることの2つ目は、リモートワークです。
アメリカではコロナ禍の後でも、全労働者の25%がリモートワークを続けると見込まれています。通勤や対面会議が減ることで時間削減になったり、オフィススペースを減らすことで経費を削減できたりします。これで削減できた時間や経費をほかの利益があがる目的に投入することで、GDPが向上できるそうです。
儲からない企業の淘汰
生産性が向上している理由の3つ目は儲からない企業の淘汰です。
利益を出していない、儲かっていない会社がコロナの影響で倒産することで、利益を出せる会社・儲かる会社だけが残るようになりました。
社会的に需要があり、時代の流れに沿っている会社だけが生き残るようになった結果、国全体の生産性向上につながっているんですね。
日本でいえばハンコ屋が倒産したり、老人が趣味で開業しているような”儲かっていない飲食店”が閉鎖されることで社会全体の生産性上昇につながるようなものです。
この現象はリーマンショックの時よりも規模が小さいそうですが、社会的にマイナスになるような企業を淘汰できるので、企業の新陳代謝を促す意味でもメリットになりますね。
生産性は統計データでしかない
ここまで、コロナの恩恵でアメリカ経済の生産性が向上している原因について書いてきました。
生産性は高いほど良いことだとされていますが、しかし、生産性はあくまでも統計的なデータでしかなく、個別の企業や従業員の働き方について、また、生産性の向上が社会全体では必ずしも良いこととは限らない点については忘れないでおいてほしいと思います。
たとえば、儲からない企業の淘汰をすることは生産性向上に寄与しますが、そのおかげで失業者が増え治安の悪化につながるおそれがあります。
日本の『労働生産性が低い理由』を全部あげてみたでも書きましたが、労働者の数を減らす(失業者の数を増やす)だけでも社会全体の生産性は上昇します。
「年金生活の高齢者が趣味で経営している、儲かっていない飲食店」はいくら潰れても問題ありませんが、宿泊施設や航空会社、若い人たちがたくさん働いているサービス業の会社などが倒産すると、生活に困る人が大量に出てしまいます。これはアメリカでも日本でも同じです。
一部のホワイトカラーの人たちが主体となって生産性が向上したように見えても、社会全体では負の側面が増大することもあるので、生産性を向上しつつ失業した人たちを助ける手段も同時に確保する必要があると感じました。
ハンコ屋を潰して社会の生産性が向上するのは素晴らしいことですが、”元・ハンコ屋の従業員”の人たちが生活できるようにベーシックインカムのような制度を整えていけたらいいですね。
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