終身雇用制度が崩壊すると具体的には何が起こるのか?

日本を代表する大企業・トヨタ自動車の社長が終身雇用制度の終了を宣言しました。

大企業がこの有り様なので、中小企業もトヨタに続いて終身雇用制度を撤廃していくと考えられます。日本を代表するような大企業でも無理なんだから俺たちにできなくても仕方ないよね?という右に倣えの風潮は、もはや日本の様式美とすらいえます。

終身雇用の恩恵を受けてきた世代の人が「終身雇用はもう無理」と言い出したのには失笑を禁じ得ないのですが、決まってしまったものは仕方がありません。僕たちは粛々と前の世代の人たちが残した負の遺産の後始末をするだけです。

とはいえ不安も大きいので、終身雇用崩壊後の時代において何が起きるのか?について予習してみました。

無能な従業員の解雇、年功序列制度の廃止

終身雇用制度とは『うちに会社に入社してくれれば一生涯面倒見ますよ』という制度なので、終身雇用できなくなるということは同時に「会社の売上に貢献してくれない従業員は遠慮なく解雇していく」ことを意味します。

これにより、

  • IT化の時代なのにパソコンもまともに使えないおっさん従業員
  • 能力に見合わない高額な給料をもらっているおじさん社員(主に管理職)

から真っ先にクビを切られていくでしょう。

新聞を読むためだけに出社していたような人たちは漏れなく解雇対象です。能力優先主義になるので仕事がデキる人にとっては公平とも言えます。

これは年功序列制度(無能でも毎年自動的に基本給が上昇していく制度)の崩壊も意味しています。

年功序列のみを頼りに出世し、会社に依存しきってる、仕事をしない管理職には消えていただく良い機会です。

退職金制度の撤廃

会社を退職する際に支給される「退職金」についても制度が変わる可能性があります。

退職金とは「長年勤めあげてくれたお礼」ではなく、本来であれば従業員が毎月の給料でもらうはずだったお金を会社側が支払いを延期していたお金です。会社側が「本当は給料として毎月払ってあげたいんだけど、いまは手持ちのお金が少ないから退職時にまとめて支払うね」と言っていたようなものです。

企業が毎年順調に成長していた時代であれば、毎月の給料として従業員にお金を支払うよりも退職金の名目で企業側にお金を残しておく方が得でした。その方が設備投資や新規事業の開拓などにお金が使えるので、企業がどんどん成長でき従業員の給料も増えるからです。

いまは終身雇用が崩壊して、従業員側からすればいつ解雇されてもおかしくない状況になりました。

そのため退職金相当額を退職時に一括で受け取るのではなく、「もらえるものは今すぐもらっておこう」と、ちゃんと毎月の給料として支払ってくれるよう従業員側が要求することが予想されます。

そもそも終身雇用制度の崩壊は”安定的な企業成長が望めなくなった”ことの表れです。つまり従業員からすれば自分が勤めている間に倒産するリスクが高まったとも言えます。自分が退職するときには会社にお金が1円も残っておらず、退職金がもらえない可能性が高くなったわけです。

それなら毎月ちゃんと支払ってもらった方が安心だよね!ということで、退職金制度は廃止へと進むでしょう。

即戦力人材の優先雇用、スキルのない新卒者はお断り

現在の日本企業では、大学や高校を卒業したばかりの人材、いわゆる新卒者を好んで採用する傾向があります。社会人経験のない人の方が自社の価値観に染めやすく、悪く言えば洗脳しやすい、企業側にとって都合が良い人材だからです。

新卒者は仕事のスキルが低く本来であれば雇う価値のない人材に分類されますが、自社の価値観に染め上げた人材を一生使い続けることは、企業側にとってもメリットがありました。

ところが終身雇用が崩壊したことで、新卒者を採用するメリットは無くなりました。スキルのない若者を雇ってイチから仕事を教えたところで、定年まで自社で働き続けてくれるわけではなくなったからです。

せっかく仕事を教えてもすぐに別の会社に転職してしまう可能性があるし、仕事を教えたところで全く学習しない「使えない人材」の可能性もあります。企業からすれば、わざわざ能力のない新卒者を採用するメリットも余裕もありません。中途採用の即戦力人材を雇った方が、企業にとっては得です。

  1. 他の会社でスキルを身に付けてきた即戦力人材を雇う
  2. 高度な専門スキルを持った新卒者を雇う

このどちらかになり、高度な専門スキルを持たない大多数の新卒者は路頭に迷うことになります。

大学・高校在学中に将来の職業を見据えたスキルの習得をしておかないと、これから先の時代は厳しいでしょう。いまはまだ学歴欲しさに進学して勉強せずに卒業するのがギリギリ許されていますが、今後はそういったことが不可能になります。

高校・大学側も、就職に役立つ知識や資格の習得を学生に約束できないところは人が集まらなくなります。中学・高校の延長線みたいなことしか教えていない学校、偏差値の低いFランクの学校は淘汰されますね。

優秀な人材の転職活動が加速。ホワイト企業だけが残る

終身雇用制度の崩壊は、向上心を持った優秀な人材の流出に拍車をかけます。

「どんなことがあってもクビにされない」という安心感は、従業員の会社への忠誠心を高めるとともに、転職を踏みとどまらせるのに一定の効果がありました。たとえ給料が安かったとしても、嫌な上司がいたとしても、「クビにされるよりはマシだよね…」と転職を思い留まらせる効果があったわけです。

しかし終身雇用がなくなり、いつクビにされてもおかしくなくなりました。中には「どうせクビにされるかもしれないんだったら、自分から会社を飛び出して自分の限界を試してみよう」と転職に前向きになる方も出てきます。

優秀な方はすでにそういった活動をされていますが、今後は”そこそこ優秀な人”までもが転職に積極的になります。

  • 優秀な人材がきれいさっぱり抜けていってしまい、ミソッかすのような人材ばかりが残った会社(ブラック企業)
  • 優秀な人が殺到してくるホワイト企業

この2つに分断され、長期的にはホワイト企業だけが生き残ることになるでしょう。ブラック企業が淘汰されホワイト企業だけが生き残れるのは良いことですね。

能力優先主義になった

以上のように、終身雇用が崩壊することによって

  • 無能な従業員の解雇
  • 年功序列制度の終了
  • 退職金制度の廃止
  • 転職市場の活性化
  • Fランク大学の淘汰
  • ブラック企業が淘汰されホワイト企業だけが生き残る

といった現象が起こります。

総じて言えば、終身雇用制度の崩壊は能力優先主義・成果至上主義への移行を意味し、企業の売上に貢献してくれない人材は邪魔な存在として遠慮なくクビにされるなど怠け者に厳しい社会になります。

終身雇用の恩恵を受けてきた団塊の世代が逃げ切り大勝利!をするのは納得いきませんが、文句を言ってもボンヤリ生きていても仕事に必要なスキルは身に付きません。これからはより一層時間を大切にし、将来仕事で役に立つスキルの習得に努めたいですね。

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