税金で食料工場を作り「食料を無料で配るプロジェクト」は可能か?シミュレーションしてみた

最近あまりにも暇すぎるので、「税金で食料工場を作り、人々に無料で食料を配布することは可能か?」といったことについて考えてみました。思考実験といいますかシミュレーションの1つとしてお付き合いいただけたら幸いです。

公的な食料工場を作り、農産物を無償配布する

プランの全体像としては以下のようなものです。

  1. 国民から集めた税金で無人の野菜工場などを作り、食料の無人生産システムを構築する
  2. システムでの生産物は国民に無償で配布する
  3. 国民はタダで食料がゲットでき餓死する人がいなくなる
  4. 将来的には食料以外にも住宅や衣服にも拡大していく
  5. 働かなくても衣食住に困らなくなる

簡潔に表現すると、

面倒くさいことは全部機械にやらせて俺たち人間は楽をしようぜ!

ということです。

いかにもダメ人間が考え付きそうな発想で恐縮なのですが、実現したいので真剣に考えてみたいと思います。

生産プラントのイメージ

食料生産のプラントとしては、野菜工場以外にも「自動運転トラクター」を活用した水田でのコメ作りやジャガイモ作りといったものも含みます。イメージとしてはアニメ「サイコパス(1作目)」の終盤で登場した無人の小麦生産農場みたいなものです。

無人で稼働する食料生産システムを税金で作り、収穫した農産物を無料で配ります

食料生産を機械やロボットに任せ、人間は機械が作ってくれた食べものをタダで頂くという算段です。

まだ技術的に難しい部分がありますしロボットのメンテナンスは人が行なう必要があるので完全に無人化・無料化することはできませんが、限りなく無人・無料に近づけることは可能ですし税金を投入する価値はあるはずです。

肥料や農薬をいかにして調達するかが課題となりますが、農作物によってはすでに機械化が進んでいるので「種まき→育成→収穫」までのプロセスを無人化することは可能ではないでしょうか?

  • 無人トラクターに畑を耕してもらい、同時に肥料の散布と種子の散布を行う
  • 育成(途中でドローンによる農薬の散布を行ったり、監視カメラによる病害虫の確認を行う)
  • 無人トラクターによる収穫

これら↑は技術的には可能です。

害虫の駆除や農薬の散布は専門知識を持った人が目視による確認をする必要があるかもしれませんが、農業に携わる人の数を限りなくゼロに近づけることができます。

食料無料化を実現するための収益構造(例)

公的なプロジェクトなのでお金の流れもハッキリさせておかなければなりません。そして基本的には、納税者は納税額以上のサービスを受け取れるように努める必要があります。

おおまかなお金の流れの例としては、

  1. 税金でお金を集める
  2. 民間企業に委託し、無人での食料生産体制を整える
  3. 生産物は無料で配布する。その際、生産物のパッケージには生産企業の広告を入れる。
  4. 食料生産に要した費用の一部を企業に支払う

といったものが想定されます。

たとえば以下のようにシミュレーションできます。

  1. 税金を100億円集め、そのうちの50億円を予算として年間10億円相当の食糧が生産できる工場の建設を民間企業に打診します。耐用年数は20年を想定。
  2. ここで生産された食料は、市場で販売すれば10億円相当になったはずですが、すべて無料で配布します。この時点では企業は毎年5億円の赤字になります。
  3. 最初に集めた税金のうち50億円は工場の建設費用に使っていますが、まだ50億円残っています。この50億円のうち毎年5億円分を企業側に支払います。この段階では企業は毎年5億円の赤字。
  4. 食料の包装などに使用した企業広告の効果、及び税制優遇により企業側に毎年10億円相当の利益をもたらす。この時点で企業側は毎年5億円の黒字。
  5. 2~4を10年間繰り返す

ここまでの納税者側・企業側の負担額、及び受け取った利益の総額を計算しますと…

【納税者側】

  • 工場建設費用の支払い:50億円(最初の1回だけ支払う)
  • 食料の対価として企業側に支払う金額:毎年5億円×10年=50億円
  • 受け取った食料の市場価値:毎年10億円相当×10年=100億円

10年間での総出費:100億円 10年間で受け取った食料の市場価値:100億円相当

20年間(工場の耐用年数)まで延長すると、総出費は150億円、受け取った食料の市場価値は200億円相当、年間平均では2.5億円分のプラスになります。

【企業側】

  • 工場建設費用の受け取り:50億円
  • 食料生産により本来市場から受け取れるはずだった金額:毎年10億円×10年=100億円
  • 食料生産の対価として実際に公的機関から受け取った金額:毎年5億円×10年=50億円
  • その他、減税措置や広告効果による潜在的な収入:毎年5億円×10年=50億円

10年間での総収入:100億円+潜在的な収入50億円相当 総出費:100億円

20年間まで延長した場合は、総収入250億円相当、総出費200億円。年間平均では2.5億円分のプラスになります。

はっきり言ってこのシミュレーションだとあまり旨みがないようにも感じます。特に民間企業側の旨みが少ないですね。収益が年間2.5億円相当しかありませんし、その収益の土台は包装などに記載した広告からの収入、あるいは減税措置といったものですから。それに肥料代や農薬代など食料生産に必要な経費もかかるので実際の収益はもっと少なくなります。

しかし1つのモデルケースとしては検討する価値がありますし、10倍、20倍と規模を大きくすれば両者のメリットも増えます。また生産システムでコストカットすることができれば、さらに収益が大きくなるでしょう。

現時点ではまだ自動運転トラクターの価格が高いなどの理由により収益化が難しいかもしれません。ですが今後こういった効率化や省人化があらゆる産業で進めば、トラクターの価格は下がりますし今よりももっと効率的に食料生産できるようになるはずです。

日本の農業従事者の数が減っていることや広大な耕作放棄地が残っていることなどを考えると、今回想定したような食料生産・配布プランが10年後には案外現実的なプランになるのではないかと思いました。

食料無料化に伴い想定される課題・問題

想定される課題についても考えてみました。いま思いついた問題点は以下の3つ。

  1. 既存の農業従事者による反対運動
  2. 食品廃棄物の増加
  3. どうやって配るのか?

1については、農産物の生産に公的機関が介入することで市場価格が歪められる可能性があります。既存の農家からすれば大手のライバルが出現することになり、しかも無料で配布しているということはその分自分たちの売上が減ることを意味します。農家が団結して地方議員に働きかけ、猛烈な反対運動が起きるのは明白です。

ただし食料の機械的な生産・無料化が進めば、こういった生産物を嫌う人たちも現れます。ペーパーレス化が進むとともに上質な紙で作られた手帳の売り上げが伸びたり、万年筆のような”特別な一品”を求める人が増えたのと同じ現象です。「このお米は昭和時代から続く伝統的な方法で生産しました」みたいな感じで宣伝すれば、熱狂的な顧客が高値で買い取ってくれるでしょう。

また2についてですが、現在は”お金”を支払うことにより食料が手に入ります。そのためお金を稼いだときの労働のイメージ、もっといえば苦労感が元となり食品を大切にする意識が芽生えますが、食料がタダで手に入るようになれば大切にしない人が増えるでしょう。大量の食品ロスは現在も問題視されていますが、食料の無料化により食品廃棄物の量が激増する可能性があります。

最後に「3、どうやって配るのか?」です。各家庭を1軒1軒周って食料を届けるのは時間も労力もかかるため非効率的です。じゃあ駅前などに窓口を設けてマイナンバーカードを提示するなどして納税を確認できた人にだけ渡すのか?となると、主に高齢者など交通弱者の立場からすると不利になります。それに余計な費用がかさみ公務員を増やすだけですので、なるべくシンプルかつ公平に配りたいのですが良い方法が思いつきません。

食料の無料化は実現できるのか?

いくつか問題はあるものの、僕としてはなんとして実現したいプロジェクトだと考えています。

だって食べものに困らなくなれば働く必要がなくなるじゃないですか。

何もしなくても生きていける、働かなくても生きていけるようになれば、ブラック企業で消耗するような人もいなくなります。それに機械に食料を生産させるわけですから、誰かの犠牲のもとに成り立つようなシステムでもありません。

そりゃあ機械のメンテナンスに関わる人などごく一部の人には働いてもらうことになりますが、ご飯がお腹いっぱいに食べられれば十分だと思うんですよね。こういうのをやりがい搾取というのかもしれませんが、少なくとも餓死する心配はないわけですから納得してもらえるんじゃないでしょうか。当番制にして国民全員で分担したっていいし。

そしてもっと未来の展望について夢想しますと、食料生産や住宅、衣服の生産までが機械化・自動化された世界では”お金”という存在が意味を持たなくなる可能性があります。衣食住に困らないのであれば働く必要がありませんし、最低限必要なものは全て機械が作ってくれます。お金が必要なくなるのも当然です。お金が必要になるとすれば、「ゲームを買いたい」など遊ぶことが動機なときくらいでしょうか。

何十年後、あるいは何百年後になるかはわかりませんが、そういう時代はきっと訪れると思います。人間は基本的に楽をしたい生き物ですし、楽をしたいからこそテクノロジーは発達し文明も進歩してきました。

「もっと楽をしたい」という欲望が人類にある限り、衣食住が機械によって生産されるのが当たり前な時代が必ず訪れると信じています。できれば僕が生きている間にそうなればいいのですが…どうなるでしょうね。そんなことを考えながら今回のエントリーを書きました。

でもまずはみんなで知恵を絞り、食料の無料化を実現したいですね!

コメント

タイトルとURLをコピーしました