いまやブラック企業で働く社畜の代名詞とされている国家公務員。彼らの労働環境を分析・改善する取り組みが行われています。
Twitterで知ったのですが、株式会社ワーク・ライフバランスという会社が各省庁で働く国家公務員に対してアンケートを実施しており、彼らの労働環境を分析していました。
【プレスリリース】【コロナ禍における中央省庁の残業代支払い実態調査】 全額支払い指示後もなお3割が残業代を正しく支払われていないことが判明 残業代を最も正確に支払っていないのは「財務省」「厚生労働省」
このプレスリリースの中から興味深かった部分にスポットを当て、働き方改革の難しさと国家公務員の劣悪な労働事情についてご紹介します。
残業の原因は国会議員がルールを守らないから
国家公務員の過酷な労働環境の1つの例として挙げられるのが、『残業』です。
深夜まで残業せざるを得ないことがあり、国家公務員のプライベートな時間が削られるとともに、十分な休息が取れずに肉体的・精神的なダメージが蓄積していくことになります。また、予算の関係で残業代が全額支払ってもらえないことが常態化しており、頭が良く、なおかつ安定した収入が見込めることで憧れの対象だった国家公務員の姿は、いまやブラック企業に勤める社畜以外のなにものでもなくなっています。
「勤務時間内に仕事を終わらせることが出来ず、残業するような奴は無能」というのが社会の常識ですが、実は国家公務員の場合には彼らの能力に関係なく残業せざるを得ない事情があります。
質問通告という制度があり、円滑な国会運営のために、国会議員が国会で質問する内容を事前に政府側へ伝えているのですが、この質問文や回答については国家公務員(官僚)が作成しています。
いわゆる質問通告は、国会における政府の正確な答弁や建設的な議論のため、国会での質疑に先立ち、議員が政府側へ質疑内容を通知するもので、慣習として行われている。 質問通告の内容は様々であり、題名や項目だけのものもあれば、詳細に及ぶものもある。 質問通告の内容は議員の判断により、政府職員との信頼関係に基づいて決定される。
この国会議員からの質問が早めに提出されれば、それだけ官僚側が資料を集めたり質問文を考えたりする時間も確保できるため、質の高い質問が出来たり建設的な国会運営が実現できます。
国会議員が政府(官僚)に対して質問を出す締め切り時間は、現在は国会審議の2日前までになっているそうです。どんなに遅くても2日前までに連絡しておけば、質問内容や回答を考えることができるよねってことです。
この「2日前ルール」ですが実際には全然守られておらず、審議前日の午後に提出されたりして、翌日までに仕事を仕上げなければならない国家公務員の人たちにとって負担となっていました。まさにデスマーチ(死への行軍)。
国会議員が質問通告の2日前を守れば、官僚たちの深夜残業を減らすことができます。そして深夜残業が減れば、残業代を減らすことができます。残業代が減らせれば、余った予算をハイスペックなPCを購入するのに充当したり、快適なテレワーク環境の構築に充てることができ業務の効率化につなげられます。
ということで、国会議員の皆さん、ルールは守りましょう!
冒頭のプレスリリースには【質問通告2日前のルールを守っていないことが多い国会議員の所属政党】も記載されていたので、とても参考になります。
また、質問内容も漠然とした内容で具体的に何のことを言っているのか意味不明なものがあったり、ネットで検索すればすぐにわかるようなことをわざわざ国会で質問しようとするものがあったりする等、質問の”質”について回答されているものもありました。国会議員にはググレカス!という言葉を贈りたい。
残業代は全額支払われていない
主に国会議員がルールを守らないせいで残業せざるを得ない国家公務員ですが、残業代が全額支払われていないという実態もあるようです。
・業務改善と残業代支給の担当の係の係長が「河野大臣がどう言っていても現実的に全額払うことなど出来ないので、在庁時間の報告を制限させる。」旨の発言をしていたので、今後継続されるかどうか絶望視している。(文部科学省 20代)
・超過勤務の申請そのものが、年間360時間、月45時間までと言われ、それ以上は申請が出来ない。(河野大臣の動き以前と何ら変化はない)(国土交通省 30代)
これは痺れますね~。どこからどうみてもブラック企業です。ニートの僕が勝ち組に見えてしまいます。
デジタル化、ペーパーレス化は省庁間で差が大きい
感染症予防の観点からテレワーク・在宅ワークが推奨される機運が高まっていますが、国の中枢にいる人たちの間ではテレワークが進んでいない部署もあるようです。
管理職、および大臣の意識の低さが原因のようですが、現場の官僚側も上司や大臣に忖度してしまい、なかなかテレワークが実現しないようです。なかにはテレワークが禁止されている部署もあるそうですが、個人情報や機密情報に関係しない内容については積極的にテレワークを推進し、国民の模範となってもらいたいですね。
また、テレワークは「個人が希望して実施するもの」という謎ルールもあるらしく、自宅からテレワークを実施した場合の光熱費や通信費は官僚が自腹で支払っているのが現状らしく、このあたりも改善が求められています。
ペーパーレス、オンラインでの仕事が民間並みにすすめば、国会議員への資料を運ぶための移動時間や資料の修正にかける無駄な時間を減らせます。業務の効率化や生産性の向上につながりますし、限られた時間と予算の中で最高のパフォーマンスを発揮してもらえるようになります。移動時間や紙資料の印刷・裁断をするために税金から給料を払っているのはバカらしいことですし、官僚たちの優秀な頭脳を無駄遣いしています。
くだらないことに時間とお金を使わずに済むように、テレワークや業務のオンライン化、ペーパーレス化が必要です。
西村コロナ担当大臣はローテク派
国家公務員の働き方改革を進める先鋒として知られる河野大臣を除いて、唯一個人名が出てきたのが西村コロナ担当大臣。
・出向者から聞いたが西村コロナ担当大臣は絶対に紙での説明を求めるため、ペーパーレス化が不可能と言っていた。記者会見で言っていることとやっていることが違うと言っていた。(防衛省 30代)
・西村大臣がコロナ室のテレワークを推進しようとしていない。(内閣官房 30代)
西村氏が実際にどのような仕事の進め方をしているのか、僕には知るすべがないのですが、もしも株式会社ワーク・ライフバランスが出したプレスリリースに記載されているとおりの仕事の進め方をしているのだとしたら、国民に対して示しが付かないなあ…と心配になりました。
西村氏について気になるのが、この方、デジタル実践議員宣言にも名前が載ってるんですよね…
宣言者は86名いますが、「デジタル化の推進を宣言します!(実践するとは言ってない)」というのであればツッコミどころが満載ですね。
西村氏に限らず東京都知事も『密な状態で』記者会見をやるなどコントを繰り広げているので、日本の政治家のギャグセンスの高さには脱帽します。
一部の政治家を責める意図はないのですが、個人的には非常に興味深く感じました。
まとめ:労働環境は運ゲー
【プレスリリース】【コロナ禍における中央省庁の残業代支払い実態調査】 全額支払い指示後もなお3割が残業代を正しく支払われていないことが判明 残業代を最も正確に支払っていないのは「財務省」「厚生労働省」 から気になった点をピックアップしてきました。
このプレスリリースを読んで僕が感じたことを一言でまとめてしまうと、職場の労働環境が良いか悪いかは「運の要素が強い」ということです。
とくに管理職の意識の差がダイレクトに影響しており、管理職が労働環境について関心がない職場では、昭和時代の仕事の進め方がそのまま踏襲されてしまい、現代的な働き方ができなくなります。また、労働環境を改善しようという努力すら行われず疲弊する一方です。
逆に管理職が労働環境の改善に積極的だったり関心が高かったりすると、歩みは遅くても着実に改善され、テレワークの実践などで生産性も向上します。
運の要素が強いので、自分が配属された職場がハズレだった場合には速やかに転職活動をはじめ、当たりが出るまで転職していくのが得策です。ブラック企業を撲滅するためにも、ハズレな職場からは一刻も早く逃げ出したいですね。
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