ベーシックインカムとは、生活するのに最低限必要なお金を政府が国民に支給する制度のことです。
「財源がない」「働く意欲が低下する」などの反対意見もありますが、この記事ではベーシックインカムとよく似た制度である「年金制度」に対抗する立場から、年金制度を廃止してベーシックインカムに移行した方が良い理由について書いてみました。
現在の公的年金制度
まず、現状の公的年金制度について確認しておくと…。
公的年金制度は、いま働いている世代(現役世代)が支払った保険料を仕送りのように高齢者などの年金給付に充てるという「世代と世代の支え合い」という考え方(これを賦課方式といいます)を基本とした財政方式で運営されています(保険料収入以外にも、年金積立金や税金が年金給付に充てられています)。
「教えて!公的年金制度 公的年金制度はどのような仕組みなの?」厚生労働省から
簡単に言ってしまうと、働いている現役世代の人たちが高齢者を養うための制度ということです。
年金制度の良いところは、若いうちに年金を支払っておけば将来自分が働かなくなった、もしくは働けなくなった時でも毎月年金が支給されるので、生活に困らないという点です。
現在の年金制度には、現役世代の人たち(年金を支払う側の人たち)の数と現役でない高齢者(年金を受け取る側の人たち)の数を比べたときに、将来に渡って現役世代の数の方が現役でない高齢者の数を上回り続けるという前提条件があります。
一般的に、国のようにたくさんの人が集まる集団を見たときには、若くて働ける人達の人数が多く、高齢で働けなくなった人たちの人数の方が少なくなります。
若い人がたくさんいても、時間の経過とともに寿命や病気などで人は死んでいくので、若い人の数の方が高齢の人の人数よりも多くなるのは自然なことですからね。
実際、現在のような年金制度が誕生した昭和36(1961)年 よりも前の時代までは、年齢別の人口をグラフにした「人口ピラミッド」を見ると、時代によって誤差はあるものの、若者の人数が多くて高齢者の人数が少ない「末広がりのピラミッド型」をしています。
ところが時間が経つにつれてこのバランスが崩れてしまい、現在では年金制度が誕生した時代とは違い、年金の財源を支払う現役世代の数に比べて年金を受け取る高齢世代の人数が増えてしまいました。
若い年代ほど人数が少ない逆ピラミッド型になりつつあります。
若い世代の人たち(年金を支払う側の人たち)の数と高齢者(年金を受け取る側の人たち)の数を比べたときに、将来に渡って若い世代の数の方が高齢者の数を上回り続けるという前提条件が、これでは崩れてしまっています。
前提条件が崩れたのであれば、年金制度自体も修正するか全く別の制度に変更する必要があります。
年金制度はすでに破たんしている
いまのところ年金制度の「修正」ということで
- 年金の支給開始年齢を引き上げる
- 若い世代が高齢世代へ支払っている金額を増額する
- 若い世代から回収した年金を金融市場で運用して増やす方法を変更する
などの対策をとっていますが、まったく追い付いていません。
前提条件が崩れたのを制度設計でなんとかカバーしようとしていますが、カバーしきれていないのが現状です。
現状の年金制度を維持し続けた場合、いま年金を支払い続けている世代の人たちが年金を受け取れるようになるころには、さらに支給年齢が引き上げられ、若い世代の負担も増えているでしょう。
いまの若い人たちが将来困らないようにするために、日本政府側としては若いうちから資産運用をして将来の生活資金を確保するように推奨しています。
NISAやiDeCoは将来年金制度がなくなることが「ほぼ確定」していることから、老後の生活資金を自分で確保してもらうための制度といえます。
ベーシックインカムに変更しよう
ベーシックインカムは色々なメリットやデメリットがありますが、「年金制度はすでに破たんしていて将来無くなることもほぼ確定しているのですから、一気に全く別の制度に変更しませんか?たとえばベーシックインカムとか。」という提案の1つでもあります。
いまのような年金制度がなくなるので、いま年金を支払っている若い世代の人たちは年金を支払う必要がなくなります。
年金を受け取っている人たちは、いま貰っている年金の金額が少なくなります。
ベーシックインカムを実現する場合、若い人たちからは賛同を得られやすいですが、高齢者からは反対されやすいです。
年金をもらっているほとんどの高齢者が、いま貰っている年金よりもベーシックインカムでもらえる金額の方が少なくなるし、生活レベルを下げる必要が出てくるかもしれませんから。
もしも年金制度を廃止してベーシックインカムに移行する場合、政治的な議論が必要になります。
その場合、ベーシックインカムに反対する人たちが「お前には投票しないぞ!」と政治家へ圧力をかけたり、そういった圧力があることを心配して政治家がベーシックインカムに反対することが予想されます。
ベーシックインカムに反対する人たちとは、年金よりももらえる金額が少なくなるのを嫌がる年金受給者たち(高齢者)です。
日本は高齢者ほど選挙のときに投票する人が多く、また人数も多いので政治的には高齢者ほど有利になります。
一生懸命に働いて若いときに年金を支払い、老後をゆっくり過ごしている年金受給者がベーシックインカムに反対するのはごもっともです。
が、しかし、現状の年金制度はすでに破たんしているので、どうあがいても首が回らなくなるよりも前に、さっさとベーシックインカムに移行した方が良いんじゃないの?と感じます。
嫌な問題は後回しにすればするほど苦しくなるし、苦しい時間を長く過ごすことになりますから。
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