今年も猛暑により、死者が出ています。
学校に通う幼い子供が熱射病で倒れたり亡くなったりする痛ましい事故も起きており、学校へのエアコンの導入が課題です。
そんな中、なにげなくラジオを聴いていたら「エアコンを設置した方がいい理由」を説明していたのでご紹介します。
学校などの教育現場だけではなく社会人が働いているオフィスにも当てはまる話なので、真夏の教育環境や労働環境を涼しく快適なものにしたい方はご一読ください。
空調設備(エアコン)を設置した方がいい理由
まずラジオでは、空調設備(エアコン)を設置することによるメリットを大きく分けて2つ挙げています。
- 健康面が改善される
- 学習環境が改善されることにより学習到達度がアップする
それぞれについて、もう少し詳しく見てみましょう。
生徒側のメリット
まずは生徒側のメリットですが、平成30年文部科学省調査「施設整備による教育環境向上の効果について」より作成されたレポート「空調設置による教育環境向上の効果」によれば、たとえば以下のようなメリットがありました。
- 学力の向上(客観的な指標)
- 集中できる(主観的な指標)
- 保健室の利用が減る
これはつまり、
- 教室が暑いと授業に集中できないが、クーラーを設置することで学習環境が改善されて授業に集中できるようになり、学力向上につながること
- 授業中に体調を崩して授業から離脱する生徒が減り、保健室の利用が減ったり授業を最後まで集中して受けられるようになること
が示されているわけです。
他にも、暑いと食欲が無くなりますが、クーラーで教室が涼しくなることで「給食を残さなくなる」などの効果もあり、生徒の健康面でのメリットが指摘されています。
教員側のメリット
クーラーを設置することによるメリットは、生徒だけでなく教員側にもあります。
- 快適な環境で教えることができる
- 生徒の授業態度が改善するので、教えやすくなる
- 授業を計画通り進めることができる
教室が暑いと生徒が集中力を欠くように、先生も教室が暑いと不快に感じます。クーラーで教室が涼しくなることで、生徒だけでなく先生も快適な環境で仕事ができるようになるはずです。
また、暑いと生徒は授業に集中できなくなるので、必然的に授業態度も悪くなります。教室が涼しくなれば授業に集中できるので態度も改善され、先生としては教えやすい環境になります。
年間の授業時間は限られていますが、生徒がしっかりと集中して授業を受けることができれば、計画通りに授業を進められるようになるというメリットもあります。
このように、空調設備(エアコン、クーラー)を導入することにより、学校側(教員)の仕事の効率を良くする効果があるのと同時に、生徒の学習効果や学力を高める効果もあるわけですね。
これらの調査結果は文部科学省だけでなく各自治体でも行っており、たとえば奈良県の「県立高校空調設備設置に係る導入前・後調査結果について(最終報告)」でも同様の結果が報告されています。
そのほか、伊坂善明さん達による「公立学校への空調導入の効果に関する研究」にはこのような内容が…。
長岡京市の公立学校3校を対象として,普通教室にエアコンが導入された2008年から猛暑の2010年までの3ヵ年にわたってエアコン導入による温熱環境面及び教育面・健康面,環境面での効果について評価した。
その結果,空調教室の室温は,3年間通じて夏は30℃以下が望ましく,最も学習に望ましい条件は25〜28℃程度とする文部科学省の「学校環境衛生の基準」の範囲内であったが,エアコンの入っていない教室は,基準を満たしておらず,エアコン無しでは過酷な環境にあったといえる。児童・生徒のエアコン導入の評価は,3年間通じて高い結果であった。
一方,教員は3年間通じて教育面の効果が顕著に表れていると評価し,健康面でも一定の効果が出ていると評価された。
しかし,28℃の設定温度には問題があることを指摘している。環境面では,エアコン導入が環竟教育につながると捉える教員は少ない結果であったが,エアコンの使い方によってエネルギー消費量が異なることなどの具体的な情報を提洪していくことで,環境教育を行っていく必要がある。
要は、
- エアコンのない教室は学習環境に適しておらず「過酷な環境である」こと
- エアコンを設置したことで教育面での効果があること
がデータとして示されているわけですね。
これだけデータが揃っていて公的機関による調査結果も出ているわけだから、真夏の教室にクーラーがないというのは
どう考えてもおかしい
ということになります。
室温28度は”根拠なし”
ところで、会社や学校などでは「冷房を使う時は室温を28度に設定すること」というルールがあるそうです。
この「28度」という温度には何の根拠もないことが、多和田 友美さん達による「オフィスの温熱環境が作業効率及び電力消費量に与える総合的な影響」 という論文で示されています。
根拠となる実験データの母数が少ないのでちょっと微妙ではありますが、この論文では、
- 室温27.5度 と
- 室温25.0度
の環境で、それぞれ会社員と学生にタイピングや簡単な計算問題などの作業をしてもらい、それぞれの室温での仕事の作業効率について調査してまとめています。
論文によると、室温25度の時に比べると室温27.5度のときは作業効率が4%落ちるという結果になっており、暑いと仕事の効率が下がることが示されています。つまり、室温28度どころか、27.5度の段階ですでに作業効率は落ち始めているわけです。
「28度に設定しておけば作業効率は落ちないから、節電のためにも室温は28度にしておけばOK!」という話は通用しないわけですな。 28度に設定しても作業効率は落ちるし全然涼しく感じないんだから、まったく意味がありません。
他の論文も含めると最適な室温は24度~26度くらいとされており、この温度の範囲内であれば仕事の効率も良くなるってことです。
エアコンを導入しないという”人災”
エアコンを導入して最適な室温を保つことにより、作業効率が良くなったり学習環境が良くなったりすることがわかりました。
ということは、もしもエアコンを導入しなかった場合、
- 教室が暑すぎて学習効率が落ちる
- 学習効率が落ちた結果、学力が落ちる
- 学力が落ちた結果、学歴などに影響が出る
- 学歴に影響が出た結果、就職先やその後の人生に影響が出る…
という可能性も考えられるわけです。
これはもう、気温が高いことによる天災というよりは、エアコンを導入しなかったことによる人災とも受け取れます。飛躍しすぎかもしれませんが、学校の教室にエアコンを設置しなかったことにより、子どもたちの将来にまで影響を与えてしまうわけです。
先ほどの文部科学省の調査結果や奈良県の調査結果が出ていることを考えると、もしかしたら近い将来「俺が希望の大学に合格できなかったのは、行政が学校にエアコンを導入してくれなかったせいだ!訴えてやる!」みたいなことが起こるかもしれません。
僕はなんでもかんでも訴えたり他人に責任をなすりつけたりするのは好きではありませんが、国や県、市区町村は学校にエアコンを設置しなかったせいで訴訟問題になる可能性があることを自覚しておいた方が良いでしょう。
最後に
今年の猛暑は「体調管理をすれば暑さで死ぬことはない」といった、自己責任で対応できるレベルの暑さではありません。
財政負担などの問題もあると思いますが、学校にエアコンを導入して学習環境を整えたり暑い日は屋外での活動を禁止するなどして、みんなで協力して生き残りましょう!
また、自宅はクーラーがあって涼しいけど学校は暑くて死にそうだ…という学生さんがいたらオンライン学習で勉強することができます。灼熱地獄の教室に行かなくて済むので、こういったツールの利用も検討してみてください。
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